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交通事故被害による「脳の後遺障害(高次脳機能障害)」と慰謝料相場2024.12.08

大阪弁護士会所属 登録番号47601
清風高等学校卒業/大阪市立大学卒業/大阪市役所入庁(平成18年まで勤務)/京都大学法科大学院卒業/古山綜合法律事務所 代表弁護士
「自保ジャーナル」No. 2157号(令和6年5月9日発行)掲載 / 朝日放送「キャスト」/弁護士の顔が見える中小企業法律相談ガイド(弁護士協同組合・共著)/滝川中学校 講演「インターネットトラブルにあわないために-トラブル事例を通じて-」
大阪市職員、大阪・京都の法律事務所の勤務経験を活かし、法律サービスの提供を受ける側に立った分かりやすい言葉で説明、丁寧なサポートで、年間100件以上の問題解決をおこなっています。
また損害保険会社元代理人弁護士の知識とノウハウをもって、交通事故被害者の救済に取り組んでいます。

交通事故被害による「脳の後遺障害(高次脳機能障害)」と慰謝料相場

交通事故による脳の後遺障害、特に高次脳機能障害は、被害者の日常生活や仕事に大きな影響を及ぼします。

交通事故で発生する脳の後遺障害の一つである高次脳機能障害は、記憶や注意、言語などの認知機能に悪影響を及ぼすため、事故前と比べて被害者の生活状況は大きく変わることがあり、それを支える家族にとっても大きな負担をともなうことがあります。

高次脳機能障害の概要や症状についての基礎知識、等級認定のポイントや注意点、そして慰謝料相場について詳しく解説します。

1.高次脳機能障害とは

交通事故による脳の後遺障害、特に高次脳機能障害は、被害者の日常生活や仕事に大きな影響を及ぼします。

交通事故で発生する脳の後遺障害の一つである高次脳機能障害は、記憶や注意、言語などの認知機能に悪影響を及ぼすため、事故前と比べて被害者の生活状況は大きく変わることがあり、それを支える家族にとっても大きな負担をともなうことがあります。

高次脳機能障害の概要や症状についての基礎知識、等級認定のポイントや注意点、そして慰謝料相場について詳しく解説します。

具体的には、交通事故で受けた頭部への外力により、脳損傷(脳挫傷、びまん性脳損傷 など)といった外傷が原因となり、注意力の低下や記憶力の喪失、言語や行動の制約などの障害が発症し、日常生活に大きな支障をきたすことが多いです。厚生労働省の調査によると、高次脳機能障害の原因の76%が頭部外傷と報告されています。(参照「平成17年度高次脳機能障害支援モデル事業実施報告」高次脳機能障害支援モデル事業 地方支援拠点機関等連絡協議会)

また、事故後に一定期間以上、意識障害が発生し、CT・MRIなどの画像診断で急性期の所見があり、慢性期には脳室拡大と脳萎縮が認められるなどがあることが特徴と言えます。

脳損傷には一次性損傷(事故による外力で、直接、脳が損傷する)と二次性損傷(頭蓋内出血等によって脳が圧迫されて損傷する)がありますが、どちらも高次脳機能障害の原因になりえます。

こうしたことから、事故により頭部を受傷した場合には、頭部に異常(器質的な損傷)が起きていないか、早い段階でCTだけでなく、MRI画像(T2*強調画像、DWI、FLAIRなど)による撮影をおこなうよう医師にお願いされると良いでしょう。

高次脳機能障害が起こる一般的な原因として、びまん性軸索損傷のほか、脳挫傷、硬膜外血腫、硬膜下血腫、脳出血が挙げられます。
しかし、びまん性軸索損傷は脳の微細な部分に損傷が生じるため、CTよりも微細な損傷を確認できるMRIによる撮影が有効です。

 

参照 詳しく解説「びまん性軸索損傷」

びまん性軸索損傷は、CT上の異常がないことが前提となっています。MRI FLAIR画像で高信号、T2*強調画像では出血を反映して低信号となります。

病態としては、頭部が回転するような動きをするとき、脳の局所には相反する力(剪断力)が加わり、神経線維(軸索)が損傷する。これが脳内で広く起こるため、びまん性軸索損傷といいます。

交通事故におけるびまん性軸索損傷については、次のコラムで詳しく解説しています。

関連記事「交通事故被害による「びまん性軸索損傷」の後遺障害等級と慰謝料相場」 

 

2.高次脳機能障害の症状

高次脳機能障害は、交通事故などによる脳へのダメージが原因で起こる深刻な症状です。

高次脳機能障害には、失語障害、認知障害、失認障害、注意力低下、記憶障害、遂行機能障害といった認知障害に加え、人格障害が認められるなど、多岐にわたる症状があります。
以下に、それぞれの症状について詳細を見ていきましょう。

 

参照 詳しく解説「局所性脳損傷」と「びまん性軸索損傷」による障害
局所性脳損傷による高次脳機能障害の場合は、失語、失行、失認などが、びまん性軸索損傷による高次脳機能障害の場合は、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などが、それぞれあります。

2-1. 失語

「失語(失語症)」

運動性失語 … 人の言っている言葉の意味は比較的わかるが話せない

感覚性失語 … 人の言っている言葉の意味がわからずとんちんかんな言葉を話してしまい会話が成り立たない

失語障害とは、言語の理解や発語に関する能力が障害される状態を指します。

会話や言葉が理解できない(感覚性失語)、思い出せない、読めない、書けない、うまく話すことができない(運動性失語)などの症状です。

交通事故などによる脳損傷が原因で発生し、この障害により日常生活や社会活動に大きな影響を及ぼします。

具体的には、簡単な質問に答えられなくなったり、自分の意図を言葉で伝えられなくなったりすることがあります。

また、他人の話を理解するのが難しくなることもあります。
失語障害は、交通事故による脳損傷が原因で発生する高次脳機能障害の一つです。

2-2. 失認

失認は、目は見えており感覚は問題ないにもかかわらず、目に見たものを認識できない(視覚失認)などの症状を指します。

これは脳の損傷により、物体や人、環境を適切に認識する能力が失われるために起こる障害です。

例えば、失認障害の症状として、身近な家族や友人・知り合いの顔を認識できなくなったり、日常的に使っている道具の使い方がわからなくなることがあります。

これ以外にも、相貌失認(人の顔や表情が認識できず、個人を判別できない)、身体部位失認や半側空間無視(視神経や触覚などは問題ないが、指定された指を提示できない、片側に意識し注意するという考えが欠けているため体の半身を認識できず障害物に当たってしまう、片側の食事を食べないなど)、物体失認(モノを見ても何か分からない)、病態失認(麻痺などの異常に気付かない)、地誌的記憶障害(知っているはずの道で迷ってしまう。街並失認、道順障害)などがあります。

これにより、本人は日常生活に支障をきたし、周囲の人々にも大きなストレスをもたらします。

2-3. 注意障害

気が散りやすく、仕事や日常生活における集中力(注意力)が欠け、ひとつの作業が長続きせず、ミスが増える注意障害があります。

例えば、交通事故により脳に損傷を受けた患者が、簡単なタスクであっても注意力を維持することが困難になり、作業中に頻繁にミスをするようになります。

これにより、日常生活や仕事に大きな支障をきたし、就業が困難となり社会生活にも悪影響を及ぼすことがあります。

2-4. 記憶障害

記憶障害は高次脳機能障害の一つであり、日常生活に非常に大きな影響を及ぼします。

交通事故などをきっかけに発生することが多く、事故前のことを忘れたり(逆行性健忘)、高次脳機能障害の発症後に新しい情報を記憶することも困難(前向性健忘)になったり、その両方(全健忘)があります。

これにより、仕事や学習が難しくなり、社会生活上で重大な支障が生じます。

例えば、日常生活の中で予定を忘れてしまう、重要な約束を忘れる、同じ質問を何度も繰り返すといった行動が見られます。

さらに、家を出る前に鍵をどこに置いたかを忘れるような最近の細かな記憶でも問題が発生します。

2-5.遂行機能障害

遂行機能障害とは、日常生活の計画立てや問題解決、判断が困難になる症状です。

これは脳の前頭葉が損傷を受けることで、この部分が司る高次機能が低下し、日常的なタスクの遂行に支障をきたすからです。

例えば、料理の手順を忘れてしまい正しく調理ができなくなる、一度に複数のタスクを管理できなくなる、不測の事態に応じた計画変更ができないなどの症状が見られます

2-6.失行

身体に麻痺があるわけではないのに、事故前に出来ていた歯磨き、うまく着替えができない(着衣失行)、自転車に乗れない(運動失行)、道具の使い方が分からなくなる(観念失行)などの症状です。

 

参照 詳しく解説「失行」の症状
「失行」は運動麻痺や感覚障害がなく、記憶等も問題なく、体が動くにもかかわらず、日常生活の行為が損なわれる状態です。
観念運動失行(意識しないと普通にできる行為が、意図したりするとできない)、観念失行(物事の順序や道具の使用法がわからなくなる)、着衣失行(衣服をうまく着ることができない)、構成失行(図の模写ができない)、があります。

 

2-7.社会的行動障害(人格変化)

社会的行動障害は、脳の損傷により、適切な行動や言動をコントロールする力が低下し、怒りやすくなる(易怒性)、喜怒哀楽が過度に出てしまう(感情易変)、自分勝手になる、抑うつ、物事への執着や個室が強くなる、幼児退行などの症状が見られます。

その結果、対人関係が円滑に進まなくなり、就労や社会生活に支障をきたします。

例えば、場の空気を読まずに不適切な発言をする、感情のコントロールができずに突然怒り出す、約束を守れないなどの行動が挙げられます。

2-8.病識欠落

自分自身に障害があることをうまく認識することができず、障害が無いものとして振舞うなど必要な治療なリハビリテーションを拒否したりすることを言います。

高次脳機能障害は、脳がつかさどる機能は部位により分かれているため損傷部位によりあらわれる症状もことなります。
症状を確認しながら必要な検査を受けることを検討します。

自賠責保険(共済)において、脳外傷による高次脳機能障害があると後遺障害等級の認定を受けるためには、高次脳機能障害に詳しい医師に「頭部外傷後の意識障害についての所見」「神経系統の障害に関する医学的意見」などを書いてもらう必要があります。

 

 参照 高次脳機能障害が後遺障害等級認定されるための必要資料(例)

・事故発生直後から症状固定までの診断書
・後遺障害診断書
・頭部外傷後の意識障害についての所見
・神経系統の障害に関する医学的意見
・日常生活状況報告
・学校生活の状況報告
・CT、MRIなどの画像検査資料(頭部)
・症状に応じてWAIS-R(知能)、WMS-R(記憶)などの各種検査

 

高次脳機能障害が残り、それ以外の後遺障害が認められる場合には併合により1つ等級が繰り上がります。

例えば、高次脳機能障害で9級、複視で10級、嗅覚脱失で12級が認定された場合、13級以上の後遺障害が2つ以上あるため、併合8級と認定される可能性があります。

ただ、個々の症状の程度や組み合わせによって、最終的な等級認定は変わる可能性があります。適切な評価を受けるためには、専門家や弁護士に相談することをお勧めします。

医師は医療のプロですが、手続きのプロではありません。
等級認定のために必要な検査に漏れが無いか、他に後遺障害に該当する症状がないかを確認しておくためにも、弊所のような医学的知識や手続きに精通した弁護士にご相談されておくと今後の手続きも安心です。

3.高次脳機能障害で認定される等級と後遺障害慰謝料の相場

高次脳機能障害の認定のポイント

1 CTやMRIで脳損傷を確認できる

高次脳機能障害は,「脳外傷による高次脳機能障害」と呼ばれており、脳が損傷することによる障害とされていますので、脳損傷に関する診断が必要です。

2 一定時間の意識障害がある

高次脳機能障害は、意識消失を伴うような頭部外傷後に起こりやすい特徴があります。

3 認知障害、行動障害、人格変化などの症状がある

高次脳機能障害で認定される等級は、自賠責保険において後遺障害等級表の1級1号、2級1号、3級3号、5級2号、7級4号、9級10号に該当します。

なお、交通事故による後遺障害慰謝料には3つの基準があります。
①自賠責基準(最低基準)、② 任意保険会社基準、③ 弁護士基準です。

強制加入である自賠責は最低限の基準であり、それでカバーできない慰謝料は加害者が加入する任意保険会社により支払いを受けることができます。
ただし、任意保険会社も営利企業であるため支払いを抑えることが利益となります。
そのため、自賠責保険による金額に少し上乗せした金額を提示されるケースが多いです。

弁護士基準は、交通事故被害の裁判で確立された基準です。
自賠責基準の2倍以上の金額となっており、被害者にとって一番有利な賠償基準です。
弁護士が主張することで有効となる基準です。
弁護士が代理人となることで、任意保険会社は裁判を意識せざるを得ず、任意交渉の段階から弁護士基準を念頭に置いた話し合いを進めることが可能です。

より有利な条件で賠償金の支払いを受けるためには、保険会社から提示された金額が弁護士基準により算定された内容であるかを確認すべきことに注意が必要です。

後遺障害等級 後遺障害慰謝料
(弁護士基準)
後遺障害認定基準
1級1号(別表第1) 2800万円

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

自賠責保険で認定する場合の考え方

身体機能は残存しているが高度の痴呆があるために、生活維持に必要な身の回り動作に全面的介護を要するもの。

2級1号(別表第1) 2370万円

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

自賠責保険で認定する場合の考え方

著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって、1人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体動作的には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや看視を欠かすことができないもの。

3級3号(別表第2) 1990万円

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの

自賠責保険で認定する場合の考え方

自宅周辺を一人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また、声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える。しかし、記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの。

5級2号 (別表第2) 1400万円

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

自賠責保険で認定する場合の考え方

単純くり返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし、新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため、一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの。

7級4号(別表第2) 1000万円

神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの

自賠責保険で認定する場合の考え方

一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの。

9級10号(別表第2) 690万円

神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当程度に制限されるもの

自賠責保険で認定する場合の考え方

一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題があるもの。

 

高次脳機能障害で認定される等級は、症状の重さや日常生活への影響により決まります。

高次脳機能障害の症状は個々に違いがあり、その影響範囲も広範であるため、等級によって適切に評価することが重要です。

例えば、重度の症状である場合は1級や2級とされ、これらの等級は最も高い慰謝料が支払われます。
一方、比較的軽度の場合は3級から12級に分類され、それぞれの等級に応じた慰謝料が規定されています。

正しい等級認定を受けることで、事故被害者は適切な後遺障害慰謝料を受け取ることができるようになります。

4.高次脳機能障害の等級認定のポイント

高次脳機能障害の等級認定では、正確な診断書と具体的な証拠の提出が不可欠です。

等級認定を受けるためには、症状の具体的な証拠と医師の診断書が必要であり、これらが揃っていなければ申請をしたとしても適切な等級が認定されない可能性があります。

たとえば、注意力低下や記憶障害が認められた場合、その程度を数字で示すテスト結果や、日々の生活にどのような影響が出ているかを「日常生活状況報告」「学校生活の状況報告」などの書面に詳細に記録することが求められます。
これにより、被害者の生活の質がどれほど損なわれているかを明確にすることができます。

また、診断書の作成には専門医の協力が不可欠です。
高次脳機能障害は、外見上の症状が少ないため、内部の問題を客観的に示す証拠が求められます。
CTやMRIなどの画像検査の結果も含めた豊富な診断資料が必要です。

 

 参照 後遺障害等級認定手続きの必要資料(例)

保険金(共済金)・損害賠償額・仮渡金支払請求書 / 交通事故証明書(人身事故) / 事故発生状況報告書 / 診断書(事故発生から治療終了まで) / 後遺障害診断書(症状固定後) / 頭部の画像検査資料(CT・MRIなど) / 神経心理学的検査(WAIS-Ⅲ(Wechsler Adult Intelligence Scale-Third Edition)、WMS-R(Wechsler Memory Scale-Revised)、三宅式記銘力検査、TMT(Trail Making Test)、語の流暢性(FAB:Frontal Assessment Battery)、BADS(Behavioural Assessment of the Dysexecutive Syndrome)、WCST(Wisconsin Card Sorting Test)、WISC-Ⅳ(Wechsler Intelligence Scale for Children-Fourth Edition)、KABCⅡ(Kaufman Assessment Battery for Children,Second Edition)など) / 日常生活状況報告書 / 学校生活の状況報告書 / 診療報酬明細書 / 通院交通費明細書 / 請求者の印鑑証明書 など

 

5.高次脳機能障害の賠償金の内容

次に、高次脳機能障害に対してどのような慰謝料などの支払いを受けることができるのか、その主な内容を詳しく解説します。

5-1.入通院慰謝料(傷害慰謝料)

入通院慰謝料は交通事故による怪我により入通院をしいられたことに対する精神的損害に対する慰謝料です。

実務上、裁判所、弁護士、保険会社が参考にしている「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部発行)によると次の表が基準となります。

例えば、病院に入院10か月、通院4か月の場合、弁護士基準の入通院慰謝料は323万円となります。

なお、この入通院慰謝料は後遺障害の認定が無くても請求は可能です。

参照【入通院慰謝料:別表1】(単位:万円)

5-2.後遺障害慰謝料(後遺症慰謝料)

後遺障害慰謝料は、交通事故によって後遺症を負った被害者が受ける精神的苦痛を補償するためのものです。

後遺障害は被害者の日常生活や仕事に大きな影響を与えることが多く、その結果、精神的な苦痛や生活の質の低下に対する補償が必要です。

例えば、交通事故によって重度の高次脳機能障害を負った場合、被害者は仕事を続けることが困難になり、日常生活にも多大な支障をきたすことが少なくありません。

そのため、この慰謝料は、被害者が感じる精神的な辛さや生活の変化を適正に評価し、補償するものと言えます。

なお、この後遺障害慰謝料の弁護士基準は、前述の「3.高次脳機能障害で認定される等級と後遺障害慰謝料の相場」の「参照 高次脳機能障害で認定される等級と後遺障害慰謝料の相場(弁護士基準)」の通りです。

5-3.逸失利益

逸失利益は、高次脳機能障害が原因で被害者が以前のように働けなくなる場合、将来的な収入の減少を補うために支払われる賠償のことです。

具体的には、高次脳機能障害により仕事を失い、新たな職に就けない場合など、次の計算式で算定でその分の収入を逸失利益として計算し賠償金が支払われます。

「逸失利益」の計算式

基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間のライプニッツ係数

ライプニッツ係数とは、逸失利益を計算する際に、中間利息控除を行うために利用する数値です。

中間利息控除とは、将来にわたり得られたはずの利益を一括で支払いを受けるため、先払いによる運用利益などを踏まえて調整するための考え方です。

参照 労働能力喪失率表(労働基準局)

障害等級       労働能力喪失率
1級             100/100
2級             100/100
3級             100/100
5級             79/100
7級             56/100
9級             35/100

逸失利益は、被害者の経済的安定だけでなく、生活の質を維持するためにも欠かせない要素となります。
したがって、交通事故等に遭った際には、専門家である弁護士の助言を受け、適切な逸失利益の計算と請求を行うことが不可欠です。

特に高次脳機能障害の場合、その症状や影響が長期間にわたるため、早期に対応することで、適正な賠償を受けるための準備が重要となります。

5-4.将来介護費

後遺障害等級の1級、2級は日常生活に大きな支障をきたし、自立した生活が困難になることが多いため将来の介護費が必要とされる場合があります。
将来被害者が亡くなるまでの介護費が支払われます。

専門的な介護が必要となるケースが少なくありません。
例えば、24時間の介護が必要なケースや定期的なリハビリが必要な場合があります。また、特別な介助装置やサポートのための人手が必要となることもあります。これらは被害者とその家族に非常に大きな負担となり得ます。

そのため、職業付添人が必要なケースは実費全額、近親者付添人は1日あたり8000円を目安に支払いを受けることができます。

5-5.家屋改造費

高次脳機能障害の影響で日常生活が困難になる場合、家屋改造費が賠償金の一部として認められます。
高次脳機能障害の人々は、移動や生活環境の変更に対応するために、住居の改造が必要になることが多いためです。

例えば、車椅子が通れるようにドアの幅を広げたり、段差をなくしたりといった改造が必要となります。
また、バリアフリーの浴室やトイレの設置も一例です。

こうした改造により、患者の日常生活の質を大きく向上させ、家族の負担軽減が減らします。

そのため、家屋改造費の請求は非常に重要であり、適切な支援を受けながら進めることが求められます。
必要な改造の妥当性や費用の見積もりを明確にし、保険会社や加害者側との交渉を円滑に進めることが求められます。

家屋改造費がどの程度まで認められるか不安なご家族様は、弁護士までご相談されると良いでしょう。

6.まとめ

この記事では、高次脳機能障害について、その定義、具体的な症状、等級認定のポイント、慰謝料相場、賠償金の内容について詳しく説明しました。

もしあなたやあなたの家族が交通事故に遭い、高次脳機能障害に苦しんでいるなら、専門の医師や法律の専門家である弁護士に相談することを強くおすすめします。
より詳細な情報が必要な場合や具体的なケースについて具体的に相談することができます。

古山綜合法律事務所では、交通事故被害による脳に損傷を受けたことによる後遺障害の問題、「びまん性軸索損傷」「高次脳機能障害」「遷延性意識障害」「四肢麻痺」などについてのサポートをおこなっています。
損害保険会社側の元代理人弁護士が在籍しており、交通事故問題の解決に自信があります。
ぜひ、お気軽にご相談ください。

初回無料相談では、あなたの症状を丁寧にお伺いし、① 診断書チェック(後遺障害認定基準を満たす記載があるか、検査漏れ、検査方法の誤りはないか)、②適正な後遺障害等級の見立て、③賠償金のシミュレーション(増額の可能性の診断)をおこなっています。

今後の生活や補償についての不安を少しでも軽く、今後どのように行動していくべきかについてアドバイスさせていただきます。
一般の方には難しい専門知識の収集や理解も必要なく、分かりやすく説明させていただくので、適切な解決に向けて必要な情報を簡単に知っていただくことが可能です。

ぜひ、お気軽に当事務所までお問い合わせください。
交通事故後すぐ、ご家族様からの相談も可能で、重度後遺障害については全国対応をおこなっています。

初回無料相談についてはご予約が必要となりますので、お電話、メール、LINEなどにてご連絡ください。

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