着手金
弁護士 古山 隼也 (こやま しゅんや)
- 清風高等学校卒業/大阪市立大学卒業/大阪市役所入庁(平成18年まで勤務)/京都大学法科大学院卒業/古山綜合法律事務所 代表弁護士
- 「自保ジャーナル」No. 2157号(令和6年5月9日発行)掲載 / 朝日放送「キャスト」/弁護士の顔が見える中小企業法律相談ガイド(弁護士協同組合・共著)/滝川中学校 講演「インターネットトラブルにあわないために-トラブル事例を通じて-」
コラム詳細
「弁護士費用特約はどこの保険会社も同じですか?」
「弁護士費用特約に入っているので、交渉などの費用は全て保険会社持ちですよね?」
弁護士費用特約付きの保険に加入されている方が多くなり、上記のご質問をいただくことも増えました。
交通事故の被害に遭われた方が、加害者本人や加害者側の保険会社との交渉に疲れ果てたり、「適切な治療や後遺障害等級認定を受けたい。」「今後の生活のために十分な賠償金を得たい。」と考えて、弁護士へのご依頼を検討されるとき、弁護士費用の負担がハードルになります。
弁護士費用特約はこのハードルを取り除いてくれるもので、弁護士へのご依頼に関して大きな意味を持ちますので、今回はこれについてご説明します。
「弁護士費用特約」とは、交通事故に遭って弁護士に依頼した場合、保険会社が費用を負担してくれるというものです。
ご本人の自動車保険に付帯されているものをご利用されることが多いですが、ご家族の自動車保険のものを利用できるときもあります。
また、火災保険に付帯されていることもありますので、自動車保険についていないときは念のため火災保険も確認しましょう。
各保険会社により適用範囲は異なりますが、保険加入者の①配偶者(同居・別居は関係なし)、②同居の親族(両親/兄弟姉妹/子など)、③別居している未婚のお子さまなどです。
なお、自動車保険に付帯されている特約の補償対象が、自動車・原動機付自転車(バイク)との事故のみとなっていることが多く、自転車同士・自転車と人との事故は対象外となっていることがありますので注意が必要です。
特約利用についてご心配であれば、当事務所でのご相談のなかで弁護士費用特約が利用できるのか、利用予定の保険契約の書面をご持参いただければ、弁護士にて確認させていただきます。
くわしくは、加入されている保険契約内容の確認が必要です。
被害者の方が弁護士費用特約を利用できないと勘違いされていることもありますので、必ずご確認ください。
・加害者である保険契約者の方において重大な過失がある場合
(【注意】被害者に過失があっても特約利用は可能です)
・保険契約者が無免許、酒気帯びなどの状態で運転していた場合
・事故被害者が親族である場合
・車両所有者の許可なく運転し、起こした事故の場合
・事業用車両で起こした事故
特約を利用するには保険会社の事前承認が必要となります。
そのため、保険会社に連絡を入れることを忘れないようにしてください。
弁護士費用特約に加入していれば、もし交通事故に遭ってしまったとしても、弁護士費用を負担することなく、交渉などを弁護士に依頼することができるので、非常にメリットの大きい特約といえるでしょう。
また、弁護士費用特約を利用したからといって、翌年度の等級には影響はありません。つまり保険の等級が下がる、保険料が上がるということはないので安心してご利用ください。
通常、弁護士費用特約は、法律相談料10万円、弁護士費用300万円が上限とされています。
法律事務所の多くは、法律相談料が有料でも1時間1万円(税別)、相談時間は30分~2時間です。そのため、複数の法律事務所に相談に行っても、法律相談料は弁護士費用特約の範囲内に収まります。
また、弁護士費用が300万円を超えることは滅多にありません。
なお、損害賠償額の前提となる後遺障害等級が上がり、弁護士費用が300万円を超えるような場合でも、当事務所では弁護士費用は保険金がおりてからの支払いとなっております。安心してご依頼ください。
「自分の保険会社に『弁護士費用特約を利用したい。』と伝えたら『弁護士を紹介します。』と言われました。弁護士費用特約は保険会社の指定する弁護士でないと利用できませんか?」と尋ねられたことがあります。
結論は、弁護士費用特約を利用する場合も、原則、依頼する弁護士を自由に選べます。もしインターネットや家族・友人などの紹介などでご自身が依頼したいと思われる弁護士がいれば、まずはその弁護士に相談してみればよいでしょう。
なお、加害者側(保険会社側)と被害者側は、処理の進め方に全く異なるところがあります。加害者側の経験があっても被害者側の経験があまりなければ処理に不安が残りますので、被害者がご依頼されるときは被害者側の経験が豊富な弁護士を選ばれることをお勧めします。
弁護士費用特約は非常にメリットの大きい特約ですが万能でなく、保険会社によって具体的な内容が異なることに注意が必要です。
つまり、冒頭の「弁護士費用特約はどこの保険会社も同じですか?」というご質問の答えは「いいえ」となります。
弁護士費用の計算方法ですが、「着手金・報酬金方式」と呼ばれるものが基本です。これは大まかに言えば「請求額や賠償額(回収額)の〇%(+〇万円)」というかたちで計算されます。
したがって、被害額が多ければ弁護士費用も高くなりますが、被害額が少なければ弁護士費用も安くなります(ただし、最低額が定められていることもあります。)。
そのため、たとえば物件事故で一般的な自転車のみが壊れたという場合などは、被害額が低いため弁護士費用もわずかとなってしまい、弁護士としてもご依頼を受けても赤字になるので対応できないといった問題が起こり得ます。
そこで、弁護士費用の計算方法には「着手金・報酬金方式」のほかに「時間制報酬(タイムチャージ)方式」があります。
これは、時給制に近いもので、「弁護士の業務時間×1時間当たりの金額」というかたちで計算されます。したがって、この方法であれば、被害額が低い事故でも、弁護士が働いた分だけ費用が発生するのでご依頼を受けることができるようになります。
なお、弁護士費用の金額や方式は、それぞれの事務所が自由に決めることができるため、事務所によっては「時間制報酬(タイムチャージ)方式」を採用していない場合もあります。
ところが、保険会社によっては弁護士費用特約で「時間制報酬(タイムチャージ)方式」が利用できず(約款に定められていない)、「着手金・報酬金方式」しかないことがあります。「着手金・報酬金方式」でも最低額が一定程度あれば問題ないのですが、最低額がかなり安く設定されていることがあります。そのため「被害額は低いけれども、対立が激しくて裁判などが見込まれる手間のかかる事故」などについて、弁護士費用特約を利用してのご依頼を受けることができない場合が出てしまうのです。
また、「着手金・報酬金方式」「時間制報酬(タイムチャージ)方式」という制度は同じであっても、保険会社によって具体的な運用が異なります。
つまり、弁護士費用特約によってカバーされる弁護士費用は上限300万円ですが、弁護士費用の計算方法などは保険会社が約款で定めてられているため、保険会社ごとで具体的な金額は異なります。たとえば「時間制報酬(タイムチャージ)方式」を採用しても、保険会社の担当者が「どのような事情があっても30時間分(60万円)までしか支払いません。」と断言してしまうケースもあります(争点の多い事故で裁判による解決を目指すときなど、弁護士の業務時間が30時間以内に収まらない場合に問題となります。)。
そのため、特定の保険会社の弁護士費用特約を利用するご依頼は受けないという方針をとっている法律事務所もあるようです。
弁護士費用特約は保険会社が弁護士費用や実費を負担してくれる特約で、通常、利用すれば交渉などに要する費用について自己負担はありません。なので、冒頭の「弁護士費用に入っているので、交渉などの費用は全て保険会社持ちですよね?」とのご質問の答えは「基本的にはそのとおりです。」となります。
ただし、交渉などに要した費用であればどんな費用でも保険会社が負担してくれるとは限らないことに注意が必要です。たとえば、後遺障害等級が問題となっており、主治医に意見書の作成をお願いするとき、保険会社によっては意見書作成料を負担してくれず、被害者が支払わなければならないこともあります。
また、法律事務所によっては保険会社の定めるものより高額な弁護士費用の計算方法を採用しているところもあるようですので、その場合だと弁護士費用特約で弁護士費用全額を負担できない(自己負担が発生してしまう)おそれが生じます。
弁護士費用特約は非常にメリットの大きい特約ですが、その内容は保険会社によって異なる部分があり、それによって問題が生じることもあるので、あらかじめ確認しておくことをお勧めします。また、弁護士費用特約を利用しても依頼する弁護士は基本的に自由に選べますので、被害者側の経験が豊富な弁護士を探しましょう。
当事務所で「弁護士費用特約」を利用し、交通事故被害について解決された方の事例です。
ご利用に関してご不安、ご不明点がございましたら、お気軽にお問合せください。
また損害保険会社元代理人弁護士の知識とノウハウをもって、交通事故被害者の救済に取り組んでいます。